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・移動式本屋の面白さはまったく違うジャンルの人と触れ合うことができる

 他のお店のことは気にしています。「飲食店はすごく売れていていいな」なんて思ったりします。

 しょうがないことです。効率よくいっぱいお金を稼ごうなんて思って始めたことではないので利益を上げる努力はしていますけれど、ただお金を稼ぎたいだけなら大学時代に勉強していた会計士になっていた方がお金は稼げますしね。

 やっぱり本屋で働いていると本が好きでインドア派の同じような人ばかりいる空間で働くことが多くなるのでどうしても視野が狭くなってしまい、内にこもっていってしまいがちになってしまいます。

 だから、まったく違うジャンルの人と触れ合う機会があるのはいいことだと思っています。たとえばアパレルショップの販売の人ならば接客するのが基本なので「なにかお探しですか」なんて声がけをしていますよね。書店員は普通そういうことをしないけど、アパレル関係の人を見習ってそういうことをしてもいいのではないと思ったりもしています。

 イベントはいろいろなジャンルの店が出店されているので利益を上げるヒントになっていますね。

・出会うはずがなかった本と人とが出会って、喜びを見出してもらえれば私は満足です

 自分がBOOK TRUCKをやっている意味のひとつとしてやはり本と人との出会いです。

 今はインターネットで本を買う人が多いですが、目的を絞って本選びをしている点どうしても好みの本ばかり見たり、買ったりしてしまいがちです。予期しないものに出会う確率はあまり高くないと思います。

 実際に本屋などにいって本を目の前にすると、予期せぬ出会いをすることがあります。

 私も実際にamazonとかネット通販を見ながら、買う本を考えるときがありますが、本のたくさんある本屋にいくと、視点が広がったり、気付くことがあります。そういった実際に本のある場所に身を置いて考えることもとても大切だと思っています。

 本をどういう場所で受け取ったかにも関わってくる話ですが、どういう環境、どういうシュチュエーションで本に出会うかによって、本の人への届き方は違うと思います。

 たとえば焼きそばなら家で自分で焼いて食べる焼きそばとお祭りの屋台で買って食べる焼きそばは味が違うと思う。食べて美味しければそれが一番いいわけで、美味しさは結局、数値化できるものではなくて、食べた本人の主観的なものだと思うんです。

 それと同じで本を面白いと思う感性は人それぞれで、絶対的にいい本というものはないと思うんです。

 時計とかであれば見た目とか、手触りとか直感的なものでかっこいいなんて思ったりするけれど、本はそうはいかないんですね。中身を読んでみるまでどんな本かわからない。ジャンルも多いですし、毎年80,000冊近く出版される。お店から消えていくのも早いですね。すべての把握できない。

 私はよくこの人に届いたら、喜ばれるのにと思う本が、結局届かないまま、消えていくことが多いと感じています。

 本はどこでどういう出会い方をしたかで、本と人との出会いがいいものか決まってくると思うんです。この社会には本と人とを結びつける機能が足りていないんじゃないかと思っています。

 私ひとりで出来ることは限られるけど、出会うはずがなかった本と人とが出会って、喜びを見出してもらえれば私は満足です。

・もしできればチャレンジしてみたいと思っています。

 BOOK TRUCK以外では私は企業から受託して企画やテーマにあった本を選ぶブックセレクトとかもしています。また移動式本屋をしていると自分のところでも移動式本屋をやりたいっていう相談をしてくれる人がよくいて、今は長野県のリサイクル業者と協力してBOOK BUSという新事業などをしています。

 BOOK TRUCKとしては、野外マーケットや蚤の市のようなイベント活動が中心であまり新しい場所での活動が開拓されていないんですが、子どものころ来ていた移動図書館みたいに住宅街にいったり、駅前にいるラーメン屋の屋台みたいな感じで仕事帰りにふらっとよれるような雰囲気のもっと生活に根ざした場所で活動したりしたいですね。

 あとは大学にも出店したいです。今になって思い返すと私自身、学生だったころBOOK TRUCKみたいなものがあったらよかったなと思っていました。当時はまだインターネットは盛んではなかったし、SNSもなかった時代なのでいい大学に入って、いい企業に入ってっていう王道的な生き方以外を知ったり、触れたりする機会がなかった。私を含めてそういった生き方がしっくりきていない人や馴染めない人がいました。

 だけど当時は、しっくりきていないけど他にどういう生き方がありえるのかとか、いろいろな選択肢に触れる機会がなくて、大学の図書館や本屋でもそういう人たちについて取り上げている本には自分自身は出会うことができませんでした。

 だからもし、新しい多種多様な選択肢に触れられる場所が大学にあったら「こういう生き方があるんだ」や「そういう世界があるんだ」なんて視野が広がって、もっと自由に進路を選べるんじゃないかと思っています。

 たとえば毎週月曜日に大学にいくと、そこに本屋があるというように、もっと学生の生活に根ざした活動をしていけたらいいなと思っています。

 ですが、学園祭とかには時々呼ばれるんですけど、大学にオフィシャルに出店するのはとてもハードルが高くて難しいんですけどね。

 それでも、もしできればチャレンジしてみたいと思っています。

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